活動状況

2024年度第51回情報通信学会大会
研究会報告・特別報告

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研究会報告

研究会名 テーマ・発表者・要旨等
<放送制度研究会> ■テーマ:ドイツの放送制度

■発表者
杉原周治准教授(愛知県立大学)

■報告要旨
ドイツの放送法であるメディア州際協定は、第30条7項6文において、とりわけ公共放送のオンライン・コンテンツがプレス(新聞・雑誌)に類似していないか否かにつき当事者の間で争いがあった場合に、その問題解決のために「公共放送事業者および上位のプレス協会は、調停委員会を設置すべきものとする」と規定している。この調停条項は2019年5月の改正法で新たに導入されたものであり、当該問題につき当事者間で争いが生じた場合に、可能な限り訴訟を回避するために、当事者に対して「自主的に設計された」調停委員会の設置を義務付けたものである。実際にはこの調停手続により和解が成立した事例はいまだ存在しないが、ただし最近になって、この調停条項の解釈・運用をめぐり激しい議論が生じている。なぜなら、公共放送のひとつである「南西ドイツ放送」が2022年から配信を開始したスマホ用のニュースアプリ「Newszone」がプレス類似するとして16の出版社から訴えを提起された事件において、シュトゥットガルト上級地方裁判所が、当該規定に基づく調停合意の締結後は、調停手続を介した解決の試みがなされるまで裁判所への申立ては排除されるとして、原告の訴えを不適法としたからである。そこで本発表は、この事件および判例を参考に、公共放送のオンライン・コンテンツをめぐる問題と紛争解決方法について検討を加えることにしたい。

■テーマ:
フランス放送制度の新展開―フランス議会下院文化教育委員会『公共放送の将来に関する調査報告書』(2023年6月7日)を素材として―

■発表者
波多江悟史准教授(愛知学院大学法学部)

■報告要旨
本報告では、フランスの放送制度の今日的展開について取り上げる。フランスでは、2022年放送法改正により国民の経済負担の軽減を図るため公共放送負担税の廃止が行われた。さらに、公共放送の財源は2024年までは暫定的に付加価値税により補填されることになった。しかし、憲法院は、2022年の判決において当該改正の合憲性を肯定する際、立法者は公共放送による任務遂行が確保されるよう2024年までの補填額と2025年からの財源額を定めなければならないという条件を付していた。そこで、議会下院は、文化教育委員会を中心として公共放送の改革に関する調査を行ったうえで、2023年に『公共放送の将来に関する調査報告書』を公表した。そこでは、今日のインターネット社会において、公共放送がどのような任務を行うべきであるのか、そのためには、どのような組織を有するべきであるのかを検討したうえで、公共放送の財源内容に関する提言が行われている。さらに、当該提言は、2024年放送法改正として具体化されることとなった。そこで、本報告では、同報告書を紹介することを通して、今日の公共放送の任務・組織・財源のあり方について考察する。

 

特別報告

報告タイトル 報告者

<特別報告>

令和6年度版 情報通信白書の概要

鈴木 健太郎

総務省 情報流通行政局 情報通信政策課

情報通信経済室長