学会について
会長あいさつ
情報通信学会会長
早稲田大学国際学術院
大学院アジア太平洋研究科 教授
三友 仁志 (みとも ひとし)
2021年6月24日に開催されました第66回理事会において、会長に再任されました。あらためて、どうぞよろしくお願いいたします。
振り返れば、2020年3月以降の新型コロナウイルス感染拡大により、対面で集う学会活動はかなりの制約を強いられてきました。伝統的な学会活動の多くは、取りやめざるを得なくなりました。他の多くの学会が大会を中止する中において、情報通信学会はいち早くフルオンラインの大会形式を取り入れ、2020年の春季大会を開催いたしました。秋季大会に続く国際コミュニケーションフォーラムでは、フィンランドと専修大学の会場とを結んだ国際シンポジウムをハイブリッド形式で開催いたしました。社会を支える基盤であることがICTの役割ですので、コロナ禍にあって、ICTを研究の対象とする情報通信学会が、ICT活用の範を示すことは、ある意味では当然と言えます。
ですが、当時は、未知の感染症の拡大の中で大会を開催してよいものかという空気が強く、またWeb会議アプリの活用も進んでいなかったため、ためらいがあったことは事実です。そのなかで、最初ならば失敗しても許されるという前向きな意見が後押しとなって、フルオンライン開催に舵を切りました。オンラインでの学会大会および国際シンポジウムの運営においては、研究企画・事業企画委員会および学会事務局が中心となってセッションの進行を円滑に進めていただきました。
出版に関しても、学会誌のオンライン化を進め、またSpringer社における英文研究図書シリーズについては第5巻まで刊行のめどが立ち、全体として、学会活動を維持することができました。さらに、関西大会では、オンラインミーティングの特性を活かしたユニークなワークショップが開催され、多くの参加者を得ました。
また学会活動と並行して、総務委員会では、学会の財政状況の分析が行われ、公益財団法人としての制約がある中で、学会の財政を健全に保つための検討が進められました。
新型コロナウイルスの感染拡大下において、理事・監事・評議員・事務局が一体となって、この難局を乗り越えることができたと感謝しております。
さて、新型コロナウイルス感染の終息が見通せない状況で、次の2年間はどうあるべきでしょうか。テレワークやオンライン会議・授業は、コロナへの対応として急速に普及いたしましたが、感染が収まってくると、オフィス業務や対面の会議・授業への回帰が強まることもわかりました。対面でコミュニケーションすることは、人にとって本源的な欲求ですので、これを否定するつもりはありません。同時に、必ずしも物理的に対面しなくてもICTの活用によって、同等あるいはそれ以上の効果を得られることが多いこともわかりました。当面、コロナと共存せざるをえないならば、単に緊急回避手段としてのICT活用ではなく、ICTというツールの効果を最大限享受するような仕組みを学会活動にも取り入れるべきでしょう。
そのためには、これまでの学会活動にとらわれず、新たな仕組みを導入し、必要があれば、委員会体制などの組織構造についても柔軟に変更していくことも考慮に入れるべきと考えます。単にデジタル化ではない、まさにデジタルによるトランスフォーメーション(変革)が学会にも求められているということです。
当然ながら、情報通信学会は伝統もあり、また公益財団法人としての制約もあります。そのため臨機応変に対応することの難しさはありますが、コロナ禍を契機ととらえ、活動の活性化を通じ、学会の新たな価値の創出に向けて努力する所存です。すでに各委員会においては、新たな委員長のもと、そのための活動を開始していただいております。
研究者および研究を目指す会員にとっては、研究発表や論文公表機会の拡充、研究会活動の活性化、国際カンファレンスの開催、学部学生や修士課程学生など若者が学会に参加し、研究発表や意見交換に参加する機会の提供が重要です。
また、学会は行政に関わる会員、および企業の会員に多くの支援をいただいております。学会には、官公庁の会議の主要メンバーも多数いますので、中立的な立場から情報通信やメディアをめぐる政策を解題し、産官学の連携を図ることも学会の役割と考えています。
18名の理事で新理事会は構成されています。学会の多様性を反映して、さまざまな分野で活躍している方たちに就任いただきました。いずれも、今後の学会を担うにふさわしい方たちです。平均年齢も数年前に比べかなり下がりました。
学会の社会的使命がより明確になるよう運営を進めます。会員の皆様のご理解とご協力を心よりお願いいたします。