活動状況

インターネット政治研究会

主 査 :  清原聖子

幹 事 :  前嶋和弘、李洪千

研究会主旨: 

本研究会は、インターネットが選挙キャンペーンや市民の政治活動にどのような影響を与えるのか、そしてインターネットは政治をどのように変えていくのか、という問題について学際的に検討することを目的とする。国際的な研究会でありながら、将来この分野の研究に進みたい若手研究者、大学院生や大学生にとっても参加しやすい研究会としていきたい。

第5回インターネット政治研究会(2018年度第1回)  
「フェイクニュースの拡散メカニズムに関する米韓比較」

日時: 2018年7月1日(日) 15:20~16:35

場所: 慶應義塾大学三田キャンパス西校舎513教室

開催報告:
 2018年7月1日、2018年度春季(第38回)情報通信学会大会にて、「フェイクニュースの拡散メカニズムに関する米韓比較」をテーマに、インターネット政治研究会を開催した。
 高選圭教授(韓国選挙研修院)は、「2017年韓国大統領選挙においてフェイクニュースの生産・拡散ネットワーク・政治的影響力の分析」の報告を行った。
インターネット政治研究会の様子

(研究報告を行う高選圭教授)
 韓国のマスメディアは、意図的に嘘の情報を掲載した記事、保守・進歩のいずれかに偏った記事・情報を「フェイクニュース」と定義している。朴槿恵大統領が弾劾され、新たな大統領選挙が実施される過程で、韓国中央選挙管理委員会が把握しているだけで3万件ものフェイクニュースが流通した。流通した場所は閉鎖的で中・高齢者層の利用率が高い閉鎖的SNSのBANDが最も多く、次いで若年層の利用が高いFacebook、Twitterであった。
 朴大統領弾劾に反対し選挙で苦戦した保守・高齢者層は、政治的目的(政治的意見が同じ者同志で連帯意識を高め、選挙に動員するため)で、フェイクニュースをインターネットやテレビ討論会で発信し、それらはBAND内で共有された。フェイクニュースの発信源の多くは、大統領弾劾事件後に保守層によって新たに設立されたメディアが多い。それらのメディアは進歩政党のフェイクニュースと同時に、大統領弾劾に反対する人々が韓国の国旗を持って行進するデモ「太極旗集会」に支持者を動員するための情報を発信していた。
 以上のように、朴槿恵大統領弾劾から2017年の大統領選挙の時期において、韓国では経済的理由ではなく主に政治的理由から、政治的理念・支持政党を同じくする人々が自分達の結束力や動員力を高める手段として、多数のフェイクニュースが発信されていた。

 

 次いで、清原聖子准教授(明治大学)は、「メディア環境から検討するアメリカにおけるフェイクニュース現象」の報告を行った。2016年米国大統領選挙中は誤ったコンテンツがフェイクニュースと呼ばれたが、選挙後はトランプ大統領が自分と敵対するメディアをフェイクニュースメディアと呼ぶなど、フェイクニュースの定義が変化している。
 かつてアメリカのテレビ三大ネットワークが報道していたニュースはどれも似た内容だったが、1980年代以降、既存の「左」メディアに対抗して保守的な政治イデオロギーを鮮明にしたケーブルテレビ局やラジオ番組が台頭した。Fox Newsは保守層、MSNBCはリベラル層に焦点を当てるなど、アメリカではメディアの分極化が進んでいる。
 有権者が接触するメディアも支持政党によって分極化している。2016年大統領選でトランプに投票した有権者は主にFOX Newsに接触し、クリントンに投票した有権者はCNNやMSNBCを視聴していた。オンラインニュースでもトランプ投票者はブライトバートやドラッジレポート、クリントン投票者はハフィントンポストを利用する率が高かった。メディアの分極化を背景に、アメリカではニュースメディアに対する信頼度、特に共和党支持者のマスメディアに対する信頼が大幅に低下している。
 一方で、ソーシャルメディアを政治情報源とする有権者は増加している。2016年大統領選挙では、62%の成人がソーシャルメディア上でニュースを取得していた。フェイスブックを主な情報源としていた人々は、フェイクニュースの見出しを正しいと感じた人が多い。
 アメリカで進行しているフェイクニュース現象を理解するには、政治的分極化とメディア環境の特徴(メディアの分極化、メディアの信頼度の低下、政治的情報源としてのソーシャルメディア利用)を踏まえることが重要である。

 

 討論者の李洪千准教授(東京都市大学)は、韓国のフェイクニュースに対する規制の動きについて補足した後、韓国で保守層からフェイクニュースがよく発信された理由、米国のフェイクニュースには政治の分極化・メディアの分極化のいずれの影響が大きいか、と質問を提起した。高選圭は、「保守層は政治的に不利な立場にあったためフェイクニュースで挽回しようとした(有利な立場であればフェイクニュースを流す必要がない)」、また、清原聖子は「政治的分極化がメディアの分極化よりも先行しているのではないか」と回答した。
 その後フロアとの間では、フェイクニュースの類型、ファクトチェック自体がラベリングにつながる危険性、フェイクニュースを発信する「行為」とその責任追及の「結果」の非対称性など、さまざまな点からフェイクニュースに関する議論が行われた。

インターネット政治研究会の会場

(フロアとの質疑応答セッション)