活動状況

アジアのメディア研究会

主 査 :  西岡洋子

幹 事 :  金美林、井上淳

研究会主旨: 

世界のメディア市場の発展において存在感をますます高めているアジア市場におけるメディア市場の展開について把握し、それに伴う競争上、制度上の問題について検討する。ただし、比較検討、全体像の把握のために、アジア以外の地域における展開にも目を配る。

2018年度 第1回 アジアのメディア研究会 報告

日 時 : 

2019年2月27日(水) 17:30~19:00

場 所 : 

慶應義塾大学 三田キャンパス 南館5階 ディスカッションルーム

       (東京都港区三田2-15-45)

講演タイトル : 

「韓国OTT関連メディアの最新動向」

講 師 :

 趙章恩(ちょう ちゃんうん)氏 / 東京大学大学院情報学環 特任助教

 

報告内容 :

 「韓国OTT関連メディアの最新動向」として、韓国におけるOTTや有料放送市場を巡る最新の競争の状況を放送市場の基本的な構造などの説明を交えてご講演頂いた。
 前半では、日本とは異なる韓国の放送市場の基本的な構造およびその変化についてご説明があった。地上放送、ケーブルテレビなどの既存メディアの売り上げが縮小しているのに対し、通信キャリアが展開するIPTVや放送事業者に番組を提供するプログラムプロバイダーの成長が著しいという。広告市場でみても、地上波より有料放送、インターネット、特にモバイルの規模が大きくなっている。現在、規制緩和の流れもあり、通信キャリアが展開して来たIPTVがケーブルテレビを買収する動きが市場の構造を変えるものとして注目されているとのことである。
ユーザーによるメディア(媒体)の利用率においても、テレビ受像機、紙新聞、紙雑誌などの既存メディアおよびパソコンは縮小し、モバイルが大きく伸びている。生活に欠かせないメディアとして、半数以上がスマートフォンであると回答するなど、ユーザーから見ても既存メディアからモバイルへかなりのシフトが進んでいるとのことである。
 OTTについては、2012年にモバイルIPTVが始まった頃から市場が本格的に立ち上がり、Netflixが2016年に参入し、激しい競争が展開されているとのことである。韓国では1995年というかなり早い時期に公共放送のKBSがインターネット放送を開始している点も印象的であった。
 無料および有料のOTTサービスが複数存在し、様々な事業者がそれぞれのビジネスモデルでサービスを提供しているのが紹介された。無料サービスには、地上波及びケーブルテレビによるものの他に、Naver TVやKAKAO TVなどの有力ポータルサイトが運営するポータル系、個人放送局などの動画系、Samsungなどのメーカー系 がある。また、メーカー系ではAIを活用したり様々な家電と連携させたサービスを導入することも話題となっているそうである。
 有料市場には地上波3社が連合するPOOQ、ケーブルテレビのTVINGなどのサービスのほか、SKグループによるOKSUSUなどがIPTVがサービスを提供しているが、2019年1月にPOOQとOKSUSUの合併の計画が発表され注目を集めている。
 また、外国事業者の影響の大きさについても印象的な状況が紹介された。Youtube はAndroidアプリの中では、10?50代を通してもっとも利用されており、インターネットPVの利用においても3位となるなど、現在は、OTTと競合する存在に成長しているという。Youtubeからスターが誕生し、地上波に進出するというパターンが多くなっているという。
Netflixは、一つのIDをシェアできるシステムをとっているため知人間で仲間を募ることがよく行われることで利用者が拡大しており、また、コンテンツ制作においても地上波のような規制の制約がなく、予算も大きいため自由な表現ができるプラットフォームとみなされ人材も集まるようになっているという。
 OTT市場の活況により地上波中心の番組流通体制が崩れ、番組の販路が広がっているとのことである。映画でも同様に販路が広がっているという。韓国のOTT事業者は、この流れにのり海外への進出も具体化しているということが紹介された。
 また、規制面では自由に活動を行う海外勢との国内事業者のとの競争や海外から提供されるコンテンツに対する規制のほか、人気コンテンツである地上波番組の独占の問題も議論されていることが紹介された。
 今回、多数の方のご参加を頂きましたこと、また、お忙しい中、大変充実した内容のご講演をして頂きました趙章恩先生に深く感謝申し上げます。